旧陸軍機無事引き上げ完了【東奥日報】

2012年09月13日 05:57

戦時中の1943(昭和18)年に十和田湖に不時着水して沈んだ旧陸軍の「一式双発高等練習機」とみられる機体の引き揚げ作業は5日午後、最後に残った本体部分を引き揚げて無事完了した。胴体側面や主翼には赤い日の丸がくっきり残り、東北財務局青森財務事務所が旧陸軍機とほぼ断定した。国内に現存する同型機はなく、引き揚げ作業を行った県航空協会の有志らは貴重な歴史資料として、復元後に県立三沢航空科学館で展示する方針。

 機体の引き揚げ作業は、同日午前にタイヤ、尾翼、エンジン、機首の順で行われ、午後からは最も大きい本体部分に取り掛かった。午後3時10分すぎ、両翼の端から端までの長さ(翼端長)が約18メートルもある巨大な本体部分が水中から現れると、大勢の見物人から歓声が上がった。

 引き揚げ作業は昨年3月に一度失敗しており、有志らが今年8月下旬から再挑戦していた。しかし、主脚のタイヤ部分が粘土質の泥に埋まり作業は難航。原形をとどめていた機体は引き揚げに伴い、機首、胴体、尾翼、エンジン部分などに分離してしまったが、ほぼ完全に回収した。

 今後は青森市に搬送して洗浄後、三沢航空科学館に運んで修復する。

 県航空協会会長で同科学館館長の大柳繁造さん(79)は「ようやく全て引き揚げることができてほっとした。復元には年単位の相当な時間がかかると思うが、貴重な航空遺産として展示したい」と話した。

 引き揚げ作業に当たった海洋土木会社「青洋建設」(青森市)会長の高橋弘一さん(77)は「若くして命を散らした乗組員たちへの鎮魂の思いを忘れてはならない」と強調した。

 旧陸軍機は、43年9月27日、秋田県の能代飛行場から八戸飛行場に向かう途中、エンジントラブルで十和田湖に不時着し、水没した。乗員4人のうち1人は救助されたが、3人は機体とともに湖に沈んだとされる。

 湖底の地形を調査していた海洋調査会社が2010年8月、御倉半島と中山半島に挟まれた中湖の水深57メートルの湖底で機体を発見した。