時効から10年 萩原功明ちゃん、大沢朋子ちゃん事件【上毛新聞】

2012年09月14日 19:10
更新日時:2012年9月14日(金) AM 07:00
 1987年9月に連続発生した二つの誘拐殺人事件が14、15の両日、相次いで2002年9月の公訴時効の成立から丸10年を迎える。高崎市筑縄町の幼稚園児、萩原功明ちゃん=当時(5)=事件と、(旧)尾島町亀岡の小学2年生、大沢朋子ちゃん=当時(8)=事件だ。時効で捜査が終結しても遺族が抱く悲しみと犯人への怒りは変わらない。今もなお真相解明を願い続けている。


■功明ちゃん父、光則さん

 「9月になると思い出すんだ。この時期にやられたんだって」。功明ちゃんの父、光則さん(68)は変わらぬ無念さを打ち明ける。

 功明ちゃんの誕生日、8月31日には毎年、赤飯を炊いて仏壇に供えている。生きていれば30歳。社会人として働いている年齢だ。それでも「私の中ではずっと5歳の姿のままだ」

 2年前、重大事件の公訴時効が廃止されたが、すでに時効が成立していた功明ちゃんの事件は時効廃止の対象外だった。「時効はなくなって当然」と思うだけに、法改正がもう少し早ければという気持ちもある。

 10年前に時効を迎えた時、「これからは残る家族を守っていこう」と気持ちを切り替え、功明ちゃんの妹3人を育ててきた。その娘3人も全員が社会人となり、自分も定年退職した。今は神社の総代や地域の防犯委員を務めている。

 だが、息子を奪われた心の傷は、ふとした瞬間にうずき出す。9月に入って名古屋市や広島市で小学生の女児を連れ去る事件が相次いだ。「いまだにそんなことが起きているなんて」。子供を狙った卑劣な犯行に憤りを隠せない。


■朋子ちゃん父、忠吾さん

 仏壇の色あせた写真の中で笑うあどけない少女。「事件の1年くらい前かな。秩父へ遊びに行った時に撮ってもらったんだ」。朋子ちゃんの父、忠吾さん(66)が目を細めた。

 毎朝、仏壇に線香を上げて、ご飯を供えて「おはよう」と写真に声をかける。こうした〝親子の時間〟を通じて娘を思わない日はない。「これからもずっと、忘れないんだろうね」。

 事件発生から25年。どれほどの月日が過ぎても事件の記憶が消えることはない。重大事件の時効が撤廃された2年前、「朋子の事件もさかのぼって時効をなくしてくれればいいのに」と何度も思った。

 期待を寄せるのは1996年に太田市のパチンコ店で行方が分からなくなった横山ゆかりちゃん=当時(4)=事件の進展。失踪のため時効と無縁で県警が捜査を継続中。朋子ちゃん事件を含めて1976~90年に太田市と栃木県足利市で起きた4つの女児殺害事件と同一犯の可能性が指摘されているからだ。

 5事件の家族で結成した家族会の一員として情報提供を呼び掛けている。「犯人が捕まったからといって何がどうなるわけでもない。けれど、どうしても真相が知りたい」。穏やかな口調ながら力を込めた。